弁護士法人FAS淀屋橋総合法律事務所

ニュースファイル ◎マスコミ報道、コメント

当事務所の弁護士の活動分野のニュースです。


●東日本大震災の復興のための特区制度について、読売新聞1面での特集にコメント(読売新聞 2012.9.5東京朝刊)

◆[復興の現実](上)特区 4割利用できず(連載)

東日本大震災からまもなく1年半。動き出した特区や高台移転などの取り組みは高齢化や人口減少が加速する被災地の復興につながるのか。その現実を追った。
     ◇
岩手県宮古市の宮古港に隣接する市内唯一の工業団地。9月に入っても、がれきが積み上がり、ダンプが出入りするたびに砂ぼこりが舞い上がる。
「雇用創出のため企業誘致に積極的に取り組む」。被災した1154社の1割を超える企業が廃業した同市では昨年10月、復興計画にこう明記した。しかし、企業を誘致する復興特区を活用した事例はない。
本州最東端。東京から公共交通機関で約5時間かかる。宅地に適した土地は市内に10%しかなく、山間部では復興に向けた住宅開発が進む。「企業を誘致する土地がない」。市幹部はため息をついた。
国は医療・福祉の分野でも、医師の配置基準の緩和や介護施設の民間参入などの特区制度を用意した。高齢化に対応するため、岩手県は今年2月、特区の認定を受けた。
しかし、活用されたのは陸前高田市の訪問リハビリ事業所1か所だけ。県担当者は「運営会社の母体がNPOで、採算を度外視したレアケース」と打ち明け、富山泰庸(とみやまよしのぶ)社長も「人口が少なく市場が小さいため、利益が出にくい」と話す。

読売新聞の調べでは、岩手、宮城の沿岸27市町村のうち、4割の10市町村が特区制度を利用できないでいる。多分野にわたる同制度を使いこなせる人材の不足も指摘される。
復興の切り札とされた同制度には、新規立地企業の法人税を5年間免除する規定もあるが、適用は1社のみ。政府関係者も「5年間では短すぎて、企業にうまみが少ない」と認める。
そんな中、「東北に医療産業の集積地が少ない」ことにいち早く着目し、特区とは別に独自の構想を進める自治体がある。宮城県岩沼市は仙台空港に近く、高速道路もある特性を生かし、医療機器製造会社や研究機関を誘致する。移転事業で新たにできる住宅地も近くに置き、雇用確保と住民定着の相乗効果を狙う。
仙台市の大手企業社長は「企業誘致は自治体間競争だ」とし、自助努力や工夫を自治体側に求めた。

新たな特区を求める動きもある。宮城県は8月、保育所建設費の補助を民間にも広げる規制緩和を国に求めた。市町村だけでは、被災した135か所のうち、沿岸部など24か所は再建に数年かかる。コンテナを代用する保育所もあり、県は「子育て世代が流出すれば復興を支える働き盛りがいなくなる」と懸念する。
被災自治体の調査を行っている斎藤浩・立命館大法科大学院教授は「厳しい現実はあるが、自治体は誘致企業の業種を絞り込むなど、街の特徴を生かした将来の青写真や復興方針を明確に示す必要がある。国は特区制度を使いこなせる人材の派遣を一層進めるべきだ」と指摘する。

〈復興特区〉
昨年12月成立の復興特区法に基づき、被災自治体を対象に、税制優遇などの特例が認められた地域。国が用意した特例から自治体側が選んで申請する。工業地域に商業施設を建てるなど、多様な規制緩和策も盛り込まれている。



●「被災者支援~多様な専門家の協同必要」 斎藤 浩(朝日新聞 201.6.10「私の視点」

私と塩崎賢明・神戸大学工学部教授が共同代表を務める「阪神・淡路まちづくり支援機構付属研究会」は、4月29日からの6日間、釜石、陸前高田、仙台、福島、いわきの避難所などでワンパック専門家相談をボランティアで実施した。原子物理学者、放射線医学者、神経内科医、建築・住宅・震災復興・まちづくり・都市計画の研究者やコンサルタント、建築士、弁護士、税理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士の総勢38人が相談にあたるものだ。
専門家は誇り高いが、被災者の立場から見ると一つの専門家の「専門」は狭く、総合的な悩みにその場で直ちには対応してくれないと感じることが多い。阪神大震災の際の活動で、私たちはそのことを痛いほど自覚している。
東日本大震災の規模、津波・原発問題を含む複合性からして、専門家のワンパックでの行動が求められる。今回実際に寄せられた相談事例からもそのことは明らかだ。例えば、地震や津波による賃借家屋の被害認定(地盤沈下・液状化も含む)の妥当性と借家権存続可否の判断、罹災証明との関連の相談には建築士と弁護士、司法書士が同席する必要がある。
夫と息子の一人を津波で亡くしたある女性は、認知症の実父の近隣への暴力に深く悩んで多量の安定剤に頼っていた。彼女の悩みは、精神科医が徹底して話を聞いて心の整理を促し、その傍らで弁護士が暴力の善後策を探った。その結果、女性は帰り際に「苦しみの一部をここに置いて帰れます」と話した。
福島第一原発の30キロ圏内に自宅を持つ人の健康、財産の問題には原子物理学者、放射線医学者、税理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士が知恵を絞った。各地の市長、副市長、議会関係者からは、都営計画関係の学者とコンサルタント、原子物理学者が主に相談を受けた。
阪神・淡路まちづくり支援機構は阪神大震災を機会に6職種士業団体と学会が協力してできた。東日本大震災までに静岡、東京、神奈川、宮城で同種組織の結成がなされている。このようなワンパックの専門家活動が東日本大震災の各地に向けいま旺盛に求められるのはないか。当面はボランティアで被災地を回り、やがては公的資金を投入しての大規模なものに高めることが望ましい。被災者・被災地の状況は刻々と変わっていく。各段階に合わせたワンパックで被災者のニーズを専門的につかみ、自治体や政府の施策づくりに役立てる必要がある。私はこのシステムづくりを今後各方面に働きかけるつもりである。


●東日本大震災救援ボランティアに関する斎藤浩の論評報道 (NHK 2011年5月4日)

いわき"ワンパック相談会"

弁護士から放射線の研究者までさまざまな分野の専門家をそろえ、被災した人たちの多様な悩みに答えようという「ワンパック相談会」が、福島県いわき市で開かれました。
この無料相談会は、16年前の阪神・淡路大震災をきっかけに神戸市に設立された民間団体、阪神・淡路まちづくり支援機構が開いたものです。
被災した人たちの多様な悩みに一か所で対応しようと、弁護士や建築士、それに放射線の研究者まで、関西を中心に30人の専門家をそろえ、訪れた人たちの抱えている問題に合わせて紹介しました。
相談に訪れた男性の1人は、震災で隣の家のブロック塀が自宅の敷地に倒れ込み、撤去するよう頼んでも聞き入れてもらえず、悩んでいました。
これに対し、紹介された弁護士は、裁判所による調停といった法的手続きなどを説明していました。
また、原発事故で放出された放射性物質の危険性を良く理解できないという人も相談に訪れ、放射線の研究者から、国が設けている暫定基準値などについて説明を受けていました。
相談会に参加した立命館大学法科大学院の斎藤浩教授は、「被災者の多様な悩みを、いろんな専門家が支援することが必要だというのが、阪神・淡路大震災の教訓だ。今後、被災者のニーズも変わってくるので、また支援に来たい」と話していました。


●東日本大震災/「阪神」教訓に設立の専門家相談会、釜石からスタート
多様な問題、迅速解決/弁護士・建築士・医師…11分野22人
(河北新報 2011年5月1日)

弁護士や建築士、医師ら各分野の専門家が1カ所に集まり、被災者の相談を受ける「ワンパック相談会」が30日、釜石市の市教育センターで開かれた。
1995年の阪神大震災で、復興に携わった専門家でつくる「阪神淡路まちづくり支援機構」(神戸市)が主催した。迅速に問題解決を図るのが狙いだ。
機構の付属研究会に所属する11分野の専門家22人が参加。土地の所有権や境界、登記、損壊・流失した住宅や乗用車のローン、陸に打ち上げられた船舶の撤去費用や漁業補償など、さまざまな相談に応じた。
機構は、阪神大震災で被災者が持ち込む多種多様な相談に対応しきれなかったとの教訓を基に96年に設立された。付属研究会代表の斎藤浩立命館大法科大学院教授は「幅広い分野の専門家が知恵を出し合い、被災者の抱える問題をワンストップで解決したい」と話した。
相談会は1日に陸前高田市の高田小、2日に仙台市の司法書士会館、3日に福島市のあづま総合運動公園体育館、4日にいわき市の市消費生活センターでも開かれる。福島では原子力や放射線治療などの研究者も加わる。


★ニュースファイルもくじ
◎マスコミ報道、コメント
◎意義ある裁判提訴、成果
◎国会公述、講演
◎著書への評価